
自分は20代から山岳会に所属していて確かに人間関係や運営で面倒なこともあるけど、山岳会に所属するメリットもたくさんあるよ!
”山岳会”と聞いて多くの人が”面倒くさそう”とイメージするでしょう。自分自身山岳会に入る前は会費もかかるし定期的な集まりもあるし、”登山したいだけなのにそんなの面倒なだけ!”と思って登山サークルに入っていました。でも実際に山岳会に入ってからは、会費がかかる理由もわかりましたし定期的な集まりの必要性も理解しています。
元々は登山サークルに所属していた自分が、山岳会に入ってわかった人間関係や運営内容・加入するメリットデメリットについて解説していきます。とくに登山サークルか山岳会のどちらに入ろうか迷っている人に読んでほしいです。
山岳会のメリットデメリットについて
まずは山岳会のメリット・デメリットについて解説していきます。
山岳会のメリット
山岳会のメリットは6つあります。
- 安全に関する意識が高くなる
- 必要な登山装具と実践的な使い方がわかる
- 遭難事故が起きた場合の連絡手段がしっかりしている
- スキルアップしたい人への登山が用意されている
- 登山仲間が増える
- 一生涯の友人ができるかもしれない
一つずつ解説していきます。
安全に関する意識が高くなる
山岳会に所属する一番のメリットと言ってもよいと思っています。山岳会ではとにかく安全を第一にして行動するのでよっぽどのことがない限り大きな事故になることは少ないでしょう。自分自身東京から高知県へと引っ越して山岳会に入った一番の理由が”山で死なない為”でした。
たとえば関東の登山ではレベルの高い山でない限りはどこの山でも人がたくさんいるので、万が一大きな事故が起きても歩いている人に声を掛けて助けを求めることが可能です。しかし四国の山だと登山口から山頂まで他の登山客と一切会わないなんてよくあることです。自分みたいに登山知識のない人間がたった一人で登山へ行って遭難事故を起こしたら死ぬ可能性が高いので、安全のために山岳会に所属することを決めました。
必要な登山装具と実践的な使い方がわかる
必要な登山装具自体はネットや本でいくらでも学ぶことはできます。しかし四国の山やその時の季節によって必要な登山装具は若干変わってきますので、そういう部分について登山歴数十年の人たちから教われることはメリットの一つでしょう。
そして実践的な使い方を教えてもらえることもメリットです。たとえばコンパスや地図の見方は本で勉強しただけでは正直よくわからない部分があると思います。実際に登山中に使い方を教わることで実践的な使い方を身につけられるでしょう。
遭難事故が起きた場合の連絡手段がしっかりしている
山岳会で登山に行く場合は山行計画書を作成して各自が2枚ずつ持って帰り、1枚は登山に持参しもう一枚は家族に渡します。そして必ず緊急連絡先担当者がいます。緊急連絡先担当者の仕事は登山に行ったパーティーのリーダーから下山した時に電話連絡を貰うだけなのですが、万が一下山時刻になってもリーダーから電話がなければ遭難事故が起きたと判断して動いてもらいます。緊急連絡先担当者が万が一動かなかったとしても、各自の家族が山行計画書を持っているので家に帰ってこなければ警察へと連絡がいくでしょう。
このように山岳会では遭難事故が起きた場合の対策がしっかりされているので、万が一のことが起きた場合でもよっぽどのことがない限りはなんとかなる可能性が高いです。
山行計画書には登る山、誰と行っているのか、必要な登山装具、登山コースや予定コースタイムなどが記載されているので、山行計画書を見ればどこの山に誰と行っているのか一目瞭然です。長野県が作成している登山計画書の例がわかりやすいです。
スキルアップしたい人への登山が用意されている
山岳会では様々な山に行きますしステップアップしたい人向けの登山も用意されているので、徐々にレベルアップしたい人には山岳会がおすすめです。ソロで登山に行く場合や登山サークルで行く場合は、自分の力量がわからず明らかにレベルの高い山に行ってしまい危険なことになる可能性もあります。
山岳会であれば先輩方に相談もできるので自分の力量とかけ離れた山に登ることはなくなるでしょう。後は山岳会だと登山中はパーティーで一番レベルの低い人に合わせてくれるので、万が一登れなさそうであれば引き返すという選択も取ってくれるので安心です。ソロだとそういうのがわからず強行して登ってしまう人もいるでしょうし、登山サークルだと無責任なサークルであれば置いていかれることもあるでしょう。
登山仲間が増える
登山仲間に関しては山岳会も登山サークルもどちらでも増えるでしょう。登山サークルの場合は入れ替わりが激しいのでたくさんの人と知り合えるチャンスがあります。山岳会の場合は入れ替わりが少ないので同じ人と何度も登山に行くことになるので、一人ひとりとの関係が濃くなります。どちらがよいかは人それぞれですが、個人的には若い間は登山サークルみたいな関係を好む人が多いような気がしています。
一生涯の友人ができるかもしれない
山岳会の人たちとは長いお付き合いになることが多いので、一生涯の友人となることもあるでしょう。結婚や仕事なんかでこれまで住んだことのない土地に引っ越した人は中々友人を作る機会なんでないでしょうし、山岳会に入ることで長いお付き合いのできる人を見つけるのもありなんじゃないかと思います。
山岳会のデメリット
山岳会にはデメリットもあります。
- 毎月の会費がかかる
- 山岳保険への加入が必須
- 全体的に高齢化が進んでいる
- 若い人だと登山レベルやペースがあわない可能性
- 拘束時間やルールはどうしても増える
毎月の会費がかかる
事務所の家賃や登山装具の新調・修理、紙やインクなどの消耗品の購入と山岳会では何かとお金がかかります。それらはすべて会員からの会費で賄われているのでどうしても毎月の会費はかかってきます。山岳会によって金額はまちまちですが、大体会費は年間で1万円前後でしょう。
山岳保険への加入が必須
山岳保険への加入も必須です。こちらは年間で1,000円~5,000円くらいが相場です。遭難事故が起きた時の治療費や救助隊を呼ぶ費用を保険でカバーできます。遭難した際にヘリコプターが飛ぶと費用は100~200万くらいかかることもあるので山岳会に入らずとも山岳保険は必須です。必ず入っておきましょう。
\YAMAPの保険がお手軽でおすすめ/
全体的に高齢化が進んでいる
多くの山岳会では高齢化が進んでおり平均年齢は50~60代となっている山岳会が多いです。若い人はどこの山岳会でも歓迎されるでしょうが、若い友達を作ろうとして山岳会に入ろうとするとがっかりすることになるでしょう。若い友達が欲しい場合は登山サークルがおすすめです。
若い人だと登山レベルやペースがあわない可能性
山岳会に所属している50~60代の人たちは技術力が凄いので難所であろうと簡単に登っていきますが、全体的なペースでいうとやはり若い人と比べると遅いです。その為若く体力のある人が山岳会に入って登山すると「ペースが遅いなあ…」と感じることはあるかもしれません。
自分の場合(30代です)登りだと少し遅いかな?と感じることは多いです。下りだと滑らないよう慎重に歩くような道でも他の会員さんは素早く下山されるので、自分が少し遅れそうになることがあります。
拘束時間やルールはどうしても増える
山岳会に所属すると拘束時間やルールは少なからず増えます。一切の集まりに参加せず登山だけ行く人も中にはいますが^^;
ルールだと、たとえば行きたい山があった場合に必ず山行計画書を作成してサインをもらう必要があります。その為、明日急に山へ行きたい!と思っても行けない可能性が高いでしょう。山行計画書に関しては本来は山岳会に所属していなくても必ず作るべきものではありますが。
山岳会に入る前に知っておきたいあれこれ
山岳会に興味を持っている人に知っておいてほしいことをいくつか紹介していきます。
20代に登山サークルと山岳会を経験して思うこと
自分は東京に住んでいた時に登山を始めて登山サークルに入り、高知県に引っ越してからは山岳会に入っています。東京に住んでいた頃は山岳会なんて面倒くさそうなイメージしかありませんでしたが、山岳会に所属した今となっては入って良かったなと思っています。
というのも東京で登山をしていた頃は本当に何も知らずに登山をしていて、コンパスの使い方も知らなければ地図も持って行っていませんでしたし、身内に登山へ行く報告すらしていませんでした。当時一人暮らしだったので万が一遭難事故を起こしたとしても気付かれないから誰も助けに来ないでしょうし、そのまま死んだ場合は死体すら発見されないでしょう。
山岳会に所属してからは必要な登山装具の使い方を学んだり山行計画書を用意したりして安全に気を付けた登山ができるようになったと思います。登山初心者で山岳会か登山サークルかを迷っている人は1~2年だけでもいいので山岳会に所属してみてください。自分の命を守るための安全な登山が身につくでしょう。
運営や集まりに一切参加せず登山だけ参加する人もいる
山岳会では運営や集まりに一切参加せず登山だけ参加される人もいます。もしかしたら人によっては運営や集まりに参加しないことを不快に思う人もいるかもしれませんが、仕事や家庭の事情で登山以外に時間を割く余裕がない人もいますし仕方のないことだと思います。
とくに20代~30代の若い人は山岳会の運営に参加するなんて面倒だと思う人が大半でしょう。山岳会に若い人が少ない一番の理由が「運営や集まりに参加するのが面倒だから」だと思っています。
どこの山岳会も会員不足に悩まされているので、運営や集まりに参加せずとも山岳会に所属してさまざまな登山に行ってくれるだけでありがたいと感じる人は多いと思います。
男女比は山岳会によってまちまち
山岳会の男女比は会によってまちまちなので気になる人は興味のある山岳会に電話をして聞いてみましょう。一般的には男性の方が多いと思いますが、自分が所属している山岳会は女性も多く登山に行っても男女比は半々になることが多いです。
登山初心者こそ山岳会に入会すべき
登山初心者であろうと山岳会には所属できます。というより登山初心者こそ山岳会に所属するべきだと個人的には思います。登山は誰でも手軽に始められる趣味なのにふとした油断で命を落とす危険性があります。その可能性を少しでも減らすためにも登山経験者から最低限のことは教わるべきでしょう。
山岳会の会員数は会によって大きく異なる
山岳会の会員数は会によって大きく異なります。少ない会だと数人で、100人を超えると相当大きな山岳会です。10~20人くらいで運営している山岳会が比較的多いでしょう。
山岳会の見つけ方
山岳会は「〇〇県 山岳会」とグーグルで検索をすると簡単に見つかります。ただし、山岳会を運営している大半は50~60代なので、まともなブログを作っている山岳会はあまりありません。なので見つかったブログがほとんど更新されていなかったり作りが雑だったりという理由で、その山岳会がダメなわけではないので注意してくださいね。少しでも気になる山岳会が見つかったらブログだけで判断するのではなく、必ず電話をして一度話を聞きにいってください。
個人的にはどこの山岳会もブログをもっと丁寧に作れば会員数は増えていくと思うんですけどね。たとえば成功している登山サークルの多くはブログを丁寧に作ったり情報発信をしっかりしている印象があります。
所属する山岳会の定期的な集まりは7つ
最後に自分が所属している山岳会の定期的な集まりを紹介していきます。山岳会によって全然違いますが山岳会にはどんな集まりがあるのかイメージがわくでしょう。
- 登山の事前準備会⇒登山へ行く度
- お食事会⇒年間2~3回
- 運営委員⇒運営委員に所属している人のみ毎月1回
- 機関紙の印刷作業⇒毎月1回
- 勉強回⇒年間数回
- 総会⇒年間1回
- 飲み会⇒年間数回
1登山の事前準備会⇒登山へ行く度
山岳会で行くと決めた登山では事前準備が登山へ行く1週間くらい前に必ずあります。仕事の都合で事前準備に参加できない方も当然いますが、登山初心者は必ず行った方がいいです。登山当日の計画や、必要な登山装具、登山地図を見ながらどんな山へ登るのかについて話し合います。
2お食事会⇒年間2~3回
いわゆるお食事会は年間2~3回あって、普段山でしか会わない山岳会メンバーとの交流をする会です。後は山岳会のメンバーが今どんな山に登りたいのか?山岳会として〇〇をしてみたい等、情報を集める会でもあります。ここで話をした内容は各お食事会の担当がまとめて、月に一回ある運営委員の議題となります。
3運営委員(運営委員に所属している人のみ)⇒毎月1回
山岳会の運営委員に所属をしている人のみ、月に1回平日の夜に集まって会の運営について話し合います。時間は大体1時間前後ですが、短ければ30分くらいで終わることもあればたまに2時間近くかかることもあります。話し合う内容は次回どこの山に行くのか、会の近況報告、直近に行った山のヒヤリハットや登山道の状態などについてです。運営委員に所属をしていても仕事が忙しくてあまり運営委員に参加できない人もいますし、遅れてきたり早退したりする人もいます。
ちなみに自分は山岳会に所属して2年目から運営委員に携わっています。毎月1回の集まりは面倒ではありますが、自分は大阪出身で高知県内には知り合いが一人もいない状態だったので、自分の趣味である登山仲間と毎月顔を合わすことで濃い関係になれるのは少し嬉しい部分もあります。面倒な気持ちもありますけどね。笑
4機関紙の印刷作業⇒毎月1回
所属している山岳会は毎月機関紙を発行していて、機関紙の印刷作業が月に一回あります。自分は機関紙の印刷作業を担当しているので、いわば毎月2回は山岳会の集まりがあるということです。機関紙の印刷自体は大体1~2時間程で終わりますが、印刷する資料を用意するのに数時間かかるので実質作業時間としては毎月3~4時間くらいかかっています。
印刷作業には大体3~5人くらい必要で、これは有志で集まって貰っています。全く来ない方もいれば、毎月のように来られる方もいます。できれば年に一度は参加してくださいとお願いはしていますが、強制ではありません。
5勉強回⇒年間数回
登山についての勉強会が年間数回開催されています。地図の読み方やコンパスの使い方、ロープワーク、冬山登山の基本についてなどなど…その時によってテーマは変わります。これも自由参加ですが、山岳会に入ったばかりの方は当然参加した方がいいでしょう。
6総会⇒年間1回
年に一度、山岳会の活動内容や運営費などについての報告会があります。運営委員はもちろん会の全員ができることなら集まって欲しい一日ですが、大体集まるのは半分くらいです。この時に次年度の運営委員の発表もあります。会員の方が普段思っていることを質問できる場でもあります。
7飲み会⇒年間数回
総会の後や夏のビアガーデン、冬の忘年会など年に何度か山岳会で飲み会があります。大体参加者は半分いくかいかないかくらいでしょうか。高知県の人は飲み会好きが多いので、こういう集まりが好きな人は多いです。
【補足】コロナ禍で中止になっている集まりも多い
言うまでもありませんが現在はコロナ禍ということもあり中止になっている集まりもあります。
まとめ 山岳会はちょうどいい面倒臭さだと思う
個人的には山岳会の集まりはちょうどいい面倒くささだと思っています。20~30代だと山岳会なんて面倒くさいと感じる人が多いでしょうし、自分も関東に住んでいた時だと面倒くさいと思っていましたが、歳をとるにつれて仕事以外で人と関わる機会はグッと減ります。
20代ならまだそんなことはありませんが、30代40代ともなると結婚や出産・転勤など人によって様々なイベントがあり昔の友達とは疎遠になることが多いです。そんな中で月に1~2回、同じ趣味の人たちと集まれる機会って割と貴重なのでは?なんて思います。もちろん仕事や家庭のことで忙しい時と会の集まりが被れば面倒だと思うこともありますし、そもそも行けないこともありますが。
山岳会か登山サークルの二択で迷っている人には山岳会をおすすめします。登山初心者であれば安全な登山の仕方を学べる環境はとても貴重なので山岳会を活用するべきです。そして”今”だけで見れば登山サークルの方がお手軽だし楽しいかもしれませんが、山岳会は登山サークルとは違って長いお付き合いになります。10年~20年後のことを考えて登山をするだけではなく友人として一生涯付き合える仲間探しとして活用してみるのもありだと思います。
登山を始めたくて山岳会に興味があるんだけど、人間関係や運営が面倒くさそうなイメージがあるし会費もかかるだろうから迷っている。純粋に登山を楽しめるのかな?登山サークルの方が良さそう!